みあきログ

『美味しさの追求』結局おいしいものを食べればいいってとこあるよね

「味覚地図は間違い」ではない!!【美味しさとは?】

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「この絵を見たことがあるでしょうか?」

 世代にもよると思いますが、私は小学校の教科書に載っていたのを覚えていたので、『味覚地図』を何年か前まで信じていました。

 この説はワイングラスで有名なリーデル社も、形状設計に利用していたことがありましたが、1990年ごろに否定されており教科書からも消されています。そして『味覚地図は間違い』という言葉が広がっています。

本当に間違いだったんでしょうか?
 

 

なぜ間違いといわれるの?

①味覚地図の起源

 『味覚地図』は、1894年Kiesowがドイツで発表した論文が元にされていることが多いです。実はこの論文は、言ってしまえばただのアンケートのようなもので、『各種の味を舌に付けて反応を取った』というものです。被験者数もたった7人でした。

 ※このBlogを書くにあたり、調べてみると、1901年に発表されたヘーニック(Hänig)の論文が元と書かれているネット記事を多く見ましたが、ヘーニッヒは論文で感度の差がごくわずかだったと書いています。差はあったということなので、この説が広がったんだろうと思います。

 7人のアンケートでは、間違いといわれてもみんな納得してしまいますね。

 

②科学の発展

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 さらに科学の発展により、味を感じる仕組みが明らかになりました。味覚には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の基本味覚と、現在は「うま味」「カルシウム味」などの様々な味覚がありますが、この味覚を伝達するのが『味蕾(みらい)』という味覚受容器です。

 それぞれの味を感じるのが異なった細胞なのですが、1つの味蕾にすべての種類の細胞を持つということが分かったため、舌の部位によって味の感じ方が異なるということが、科学的に否定されました。

 味を受容する細胞の分布にかたよりがないということは正しいです。

 

 

間違いではない3つの理由

①人間の行動

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 アイスやケーキを食べるとき・アメをなめる時と、粉薬を飲むときと同じ味わい方をしているでしょうか?

 苦いものは早く飲み込みたいと口の奥のほうに、甘いものはよく味わいたいと舌の前のほうで味わうのではないでしょうか?

 つまり、『甘いものは舌の先』『苦いものは舌の奥』で味わっていますね!

 

②科学的な証明

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 味の伝わり方は『細胞への刺激が』⇒『神経を伝わり』⇒『に信号が送られ』て感じます。

 つまり、細胞だけでは話ができないということです。そして、神経の応答速度は味と舌の場所によって異なるのです。

 例えば舌の奥のほうにつながっている舌咽神経は苦み物質(キニーネ)に対する感受性が特に高いことが知られています。つまり、舌の奥の方が苦味を感じやすいということですね。

 神経まで考慮すると科学的にも根拠があります

 

③口の構造と味の閾値

 味の感度はそれぞれの味の種類によって異なります。

(強)苦味⇒酸味⇒塩味⇒甘味(弱)

 死に直結するほど感じやすくなっています。物質により異なりますが、砂糖と苦み物質では1000倍程度違うという報告があります。

・甘味:エネルギーのシグナル
・塩味:ミネラルのシグナル
・酸味:腐敗物のシグナル
・苦味:毒物のシグナル
・うまみ:タンパク質(アミノ酸)、遺伝子(核酸)

 次に、何か食べた時に口の中で味が最後まで残る部分はどこでしょう?
喉の奥に近い舌の横の部分ではないでしょうか。舌を動かしやすい部分は、口の中でこすりあわされて自然と味が取り除かれていると思います。

 つまり、濃度が薄いものが最後まで残るのは舌のワキや舌の付け根・ノドの奥の部分・・・

 敏感な味ほど喉の奥のほうで感じるということになります。

 

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最後に

このように、ヒトは味覚だけで味を感じているわけではありません。味のほとんどは嗅覚ともいわれますね。

 食べるものが変わったり、嗜好が変わると味の感じ方は変化していくと思います。社会、文化、心理、五感など様々な条件で味を感じることが面白いですね。

 

 
 

最近甘味を苦みと同じ部分で感じることがありませんか?

 最近人工甘味料の入った飲み物を口にすることもあると思いますが、「サッパリしない」「甘さが口に残る」といったイメージあるのではないでしょうか。その『甘さ』は舌の奥のほうではないでしょうか?

 人工甘味料は砂糖の200(アセスルファムK)~600(スクラロース)倍の甘さがあります。苦みと同じ感度があると、甘味も同じ部分で感じますね。

 

 ちなみに細かい話をすると、舌の付け根の上の喉の部分も味覚があります。舌の付け根をこすり合わせても、ノドで甘みを感じてしまいますね。ちなみにその部分の神経は『甘味』に対する応答性が高いです。

 

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References
 Kiesow,F.(1892),Beitrage zur Physiologischen phychologie des geschmackssinnes, Phlos.Stud., 10, 329―318 (in Germany)
 Hänig, D. P. (1901), Zur Psychophysik des Geschmackssinnes, Philosophische Studien, 17, 171―123 (in Germany)

日本調理科学会誌 Vol. 43,No. 4,221~227(2010)